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科学の力ってすげー?

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【本】凡才の集団は孤高の天才に勝る―「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア

心理学研究者のキース・ソーヤー(Keith Sawyer)による
集団での創造性発揮に対して
豊富な事例研究から、現実に使えるヒントをまとめた
「実用書」。
原題は Group Genius The Creative Power of Collaboration.

著者はもともとがチハイ・チクセントミハイの弟子というところから
研究をはじめており、
「フロー状態」に関して専門家である。
あくまでチクセントミハイが「個人のフロー」に焦点を当てていたのに対して
著者は、集団がそのようなことを起こせるのか、起こせるならその鍵は何か、
というところに焦点を当てている。

面白い知見が詰まっているのだが、
私としては以下のことが特に面白かった。

「すごい発明・発見が独力によるものであることは、まずない」
→私たちは、天才の閃き、という説明を好むし、
 また当事者も、そう思わせたい、とか、そう思い込んでいる、
 ということが実に多いが、
 綿密に調べてみると、
 いずれも、数多くの人とのコラボレーションの結果生まれた
 方策、というくらいのものである。

「異質の集団は、同質の集団より、はるかにコラボレーションの創造を生む」
→当たり前のような気もするが、
 研究として、実証された話として認識できたのは、
 私にとっては初めてだった。

「親密度は低すぎても高すぎても、最適な創造性は発揮されない」
→100年かかる科学的発見はさておき、
 現実の企業や研究組織による活動は、リアルタイムな人間どうしの
 やりとりから生まれる。
 そうしたときに、親密度が低いと、文脈の共通理解がもたれないが、
 一方で親しくなりすぎると、相互の反応が刺激的でなくなって
 創造性への寄与が下がるという。
 これは面白い。
 確かに私自身、新しいチームや、別の会社に移った場合、
 最初は共通理解を持つまで自分が何もできない感じがして辛いのだが
 ある程度、理解できて親しみを持てるようになると、
 個性に基づく相互刺激を適切に発揮できるような気がする。
 ただ、これがそのまま固着してしまうと、多分新しいことは生まれづらいだろう。

今日、とりわけB2C、消費者向けビジネスでは、
あらゆる商品やサービスがコモディティ化しつつある。
よほど「その商品じゃないとだめ」という理由がないと、
値段によって選択肢からあっさり外される運命にある。
それに抗うには、常に創造的に顧客の問題を解決しうる商品を
開発し、営業していくことが求められる。
となると、その企業集団は、開発の1部門や、何かの事業部だけ
ではなく、組織全体が集団で創造できる仕組みと文化を持っていることが
競争力の持続の鍵になると思われる。
本書で示されるように、同質化集団だけではさして創造的ではない。
たとえば企業組織の中でも、営業と開発、国籍の違う人々、など、
異質性を持つものどうしの接点を持ち、そこから協同的にすぐ取り組めることが
重要だと思う。

さて、ここから敷衍して。
なぜ日本企業の商品やサービスの創造性が世界の中で
落ちているかのように見えるか、という問いを立て、それが仮に正しいとして、
それは相対的に他が上がっているからか、日本が下がっているからか、は分からない。
が、ひとつ思うのは、80年代までに経験していた
右肩上がりの経済成長状態というのは、
「社内のコラボレーションと新規挑戦を”飼う”余裕があった」
のではないかという仮説である。

プロダクト・ポートフォリオのマトリクスをイメージしたときに、
金のなる木が十分に仕事をしてくれていると、会社として財務的に
不安がないので、問題児を持っておく余裕ができる。
それが、やがてスターとなっていくことが、ほっといてもなされていたのでは、と。

しかし、バブル崩壊以来成長が止まり、既存産業の衰退が加速する中で、
すぐに結果の出ない活動や挑戦は、お金の無駄遣いというように
経営者や、社内・社外の財務的な部分を気にする人々が考えてしまい、
それを厳しく追放するようにした結果、
さて、次の問題児→スターを生む流れがぶっ壊されてしまったのではないだろうか。
それは当然、企業全体の衰退を早めるのだが。

仮に大企業がそういう事業の新規展開ができない体質になったとするなら、
それはベンチャー企業などにまかされることになるが、
そうなると、たとえば米国と日本のように、ベンチャーの事業拡大を加速させる
仕組みと文化が整っている国とそうでない国があったときに、
歴然たる差が生まれてしまう。
ICTに関わる産業では、その速度特性からしても、差が顕著だったのかもしれない。

という、本書の感想とは直接関係ないけれど、思ったこと。

///
Group Genius: The Creative Power of Collaboration [Kindle Edition]
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