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科学の力ってすげー?

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【本】みんなの進化論



進化論を本質的に理解することは決して難しいことではない。
そしてその考え方を適切に用いることで、
自然科学、社会科学、人文科学、そして文化や社会の現実に至る
実に幅広いテーマについて、
洞察に満ちた知見を得ることができる。
それは、人が社会のなかで思いやりに満ちた人生を送る
根拠ある手助けとなる。

それを、わかりやすく、情熱とユーモアたっぷりに
伝えてくれる本である。

本書にて言及されているウェブサイト、参考書籍などは
とてつもなく幅広い分野に及んでおり、
著者の卓見に賞賛の気持ちを持つ。
一方でまた、著者が述べるように、数多くの分野でまだ
進化論が正しく受け止められているわけではなく、
したがって進化論的見地からの研究が手つかずになっている現状がある。

考えてみると、
進化論そのものが、ダーウィンが理論としてとりまとめてから
まだ150年足らずで、
“競合する見解”(宗教的創造説や、あるいは進化論内にも分派があるが…)との
人々の信念という生態系における争いの中では後発もいいとこなのだ。

私自身は進化論に考え方に大きく開眼体験を得て、
非常に役立っていると思うけれど、
世の中のほかの信念体系にいる人々にすんなり受け入れられるものだとは
思っていない。
それがゆっくりとした歩みであれ、進めばいいなとは強く思う。

本書は別の信念体系にいる人々の思考をすぐ変えるようなものではないが、
逆に進化論を正しく伝えたい立場の人にとっては、
頼りになる、立ち返ることで気づきを得られるすばらしい書であろう。

また本書は、35章(最終章)の著者の人生回顧録がとてもいい味を出している。
今の奥さんと結婚する前の、前妻との出会いから別れの話まで書いていて(笑)、
だからこそ、読んでいて、著者の一人の人間としての姿がくっきり伝わった。
紆余曲折あって、落第寸前から、多くの仲間に支えられて
生物学研究者と、進化論を広める担い手としての生き方を送ってきた
様が、印象的である。
もちろん会ったこともないが、目の前で聞いたような気分だ。

とかく科学書というと「正しさ」のみの力説に終始して、
読み終わっても結局あとでなんだったのかよく分からないことがある。
だが本書は科学的視座に徹頭徹尾しながら
デイヴィッド・スローン・ウィルソンという人物の生き生きした語りなので、
読み手として正面から向き合って、考えたくなるのだ。

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みんなの進化論 [単行本]
デイヴィッド スローン ウィルソン (著), 中尾 ゆかり (翻訳)
Evolution for Everyone: How Darwin's Theory Can Change the Way We Think About Our Lives  
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